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一寸のハエにも五分の大和魂・改
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ギボシフンバエモドキでしょうか... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/03/02(Mon) 21:44:42 No.5149 ホームページ  引用 
8月に茨城県北部の山間部(alt.800m)で採集した,体長5mm程のフンバエです.

写真ではわかりづらいですが,翅の先端1/4ほどが暗化しています.

旧北区の双翅目マニュアルでは,Parallelomma属となりました.
HeringのZwei neue Cordyluriden aus Japanを調べてみましたが,比較標本も無く,胸側部の暗色帯はC. hostaeに似ているとしか判りませんでした.
(検索にPraalarborsteが出てきますが,中胸背盾板外縁部にある1剛毛がPraalarborsteなのかSupraalaborsteなのか判りません)

これが,ギボシフンバエモドキなのでしょうか?

よろしくお願い致します.


Re: ギボシフンバエモドキでしょ... 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/03(Tue) 14:31:37 No.5153  引用 
この標本の前胸の前側板(episternum)は完全に裸でしょうか?しばしばこの部分の毛は淡色できわめて細いために見逃してしまうことがあります.このような毛があればParallelommaではなくてCordyluraの可能性があります.

私のところにはP. sasakawaeと同定できる標本しかありませんが,これでは前胸前側板は完全に裸です.この標本は第3触角節(第1鞭小節)は褐色で,黄色の基部の2節とは色調がはっきりと異なっています.

学研生物図鑑(学研中高生図鑑)で,Chilizosoma hostaeと私が解説した標本は,私の記憶では,私の標本ではなくて,学研の方でどなたかに依頼して作成した標本であって,(無責任な話ですが)私自身は標本そのものを見ることなく,解説だけを書いたと思います.そのために,写真の標本が真のParallelomma hostaeであるという確信は,今はありません.日本に何種も生息しているCordyluraの種の可能性も否定できないと思います.

Re: ギボシフンバエモドキでしょ... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/03/03(Tue) 20:13:50 No.5155 ホームページ  引用 
三枝豊平様.

学研中高生図鑑に,そんな裏話があるとは驚きです.

先に掲示した写真の種類は,前胸前側板に長毛を欠き,prementumに比べ小顎鬚がかなり短い特徴を備えているので,Parallelommaと判断しました.

笹川様がCordylura属の1種している種類は,こちらの写真のような種類では無いかと思います.(実は,こちらのほうがC. hostaeに似ています.)

前記の種と酷似しているのですが,三枝様が指摘しているように前胸前側板には10本ほどの淡色の長毛が生えており,prementumに比べ小顎鬚が長い特徴を備えています.


Re: ギボシフンバエモドキでしょ... 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/04(Wed) 01:29:45 No.5158  引用 
Parallelomma sasakawaeと同定できそうな標本を示しておきます.福岡県英彦山5月6日採集の♂です.触角の第3節が暗色の状態がなんとか写っています.

Parallelommaの方はCordyluraに比べると第5腹節腹板の葉状突起がはるかに小型のようですね.その点からも市毛さんが最初に図示した標本はParallelommaのようですね.P. hostaeの可能性がたかいと思います.


Re: ギボシフンバエモドキでしょ... 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/04(Wed) 04:00:39 No.5159  引用 
P. hostaeもP. sasakawaeも共に旧北区のカタログには出てこないし(シノニムとしてもでてこない;かなりフンバエ科の部分は雑な印象を受けます),Fauna EuropaeaとかThe leaf and stem miners of British flies and other insectsでは,両種ともにSifner, 1978によってヨーロッパのP. vittatum (Meigen, 1826)のシノニムとされています.

しかし,新訂原色昆虫大図鑑第3巻ではこの属は笹川先生が改定を担当されていて,旧版(これも同先生の執筆)の学名Chylizosoma sasakawae HeringをParallelomma sasakawae (Hering)と改定されています.旧版で付記されていたChylizosoma hostaeについては,新訂版では削除されています.いずれにしても,少なくともsasakawaeについては2008年段階で笹川先生は本種をvittatumのシノニムにされていないので,3種の関係は未解決ということでしょうか.なお,九州大学のカタログではP. sasakawaeのみでhostaeが抜けています.(私も原稿段階で一通り目を通したことになっているのですが,膨大な種数でとても完璧は期待できるものではありませんでした.長生きすると自戒せざるをえない機会が多くなる).

フンバエ科はこのほかにも日本列島にはかなりの種が生息していますが,属などがわかりにくいものです.私の標本(といっても一部しかマウントしてないのですが)は,以前Vockerothさんが来訪された折に属までは同定してもらっています.それによると,Bucepharina, Megaphthalma, Nanna, Neorthachetaなどの属も日本にいるようです.久留米の平地で採集された小型種は新属であるとのことで,彼の手元にありますが(多分カナダ国立昆虫コレクション中),未記載です.フンバエ科の属の総説はVockerothさんの確か学位論文で,分厚い原稿を見せてもらったことがありますが,まだこれは出版されていないと思います.あまり大きな科ではないので,どなたか早めに日本産のものをまとめていただきたいものです.

Re: ギボシフンバエモドキでしょ... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/03/04(Wed) 23:27:10 No.5163 ホームページ  引用 
三枝豊平様.

色々と驚く情報ばかりです.
また,多数の未記録属が日本に分布するとのことも驚きです.

双翅目は,まだまだ未解明なグループが多いので面白いと思うのですが,研究者が減る一方で残念です.

ぜひ,長生きして色々と教えて頂けると幸いです.

ありがとうございました.

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