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一寸のハエにも五分の大和魂・改
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イラガの寄生蝿 投稿者:しぐま 投稿日:2008/08/03(Sun) 06:59:22 No.4746  引用 
初めまして。どこで質問しようか迷ったのですが、思い切ってここに来ました。素人には敷居が高そうなので少し緊張しています。

5月にフィールドでイラガの繭を採集し、室内飼育していました。
(セイボウが出たら良いなと少しだけ期待。)
そろそろ羽化する頃かと気にかけていたら先日なんと、容器内に一匹の大きなハエが居ました。繭の蓋はパカッときれいに開いていたので寄生されていたようです。
自分なりにネットで調べたところ、白くて大きな平均棍もあるし素人目にはブランコヤドリバエに似ている気もします。
しかし背中の縦筋が明瞭でないようです。羽化当日は不明瞭なのでしょうか。ブランコ状態の蛹も見ておりません。イラガの繭から突然ハエが羽化したようです。
残された羽化殻をピンセットで取り出そうとしたのですけど、固い繭を壊さないと難しいようです。
この寄生バエの名前を教えて下さい。よろしくお願いします。


Re: イラガの寄生蝿 投稿者:アノニモミイア 投稿日:2008/08/03(Sun) 11:56:24 No.4748  引用 
寄生蝿の同定結果ではありませんが,2点.

1.双翅目の同定,特にハエ型の双翅類の同定は,顕著な翅斑,体形や腹部の斑紋などを現さないハエの場合は,翅脈相,体の刺毛の分布状態を,種までの同定では雄の交尾器などの形質を調べて,初めて可能になります.ヤドリバエ科でもダイミョウヒラタヤドリバエ,マルボシヒラタヤドリバエ,セスジハリバエのように特徴がはっきりしている種はかなりの正確さで同定できるのですが,このような特徴的な種以外は上記の形質を見ないと同定は一般に困難です.
ヤドリバエ科はしかも種が著しく多く,日本列島だけでも数百種以上が生息しており,その中には名称がない未記載種や日本から記録のない未記録種も多数含まれています.
また,このサイトでは日本で2名しかいないヤドリバエ科の分類学者の直接的な関与はまだありません.
以上の現状では,ヤドリバエの同定の必用がある場合は,よほど同定の重要性が客観的に認めてもらえば,上記分類学者に同定を依頼して,同定していただける可能性があるかもしれません.しかし,このサイトでは形質が判然としない画像のヤドリバエの同定は困難だろうと思います.

2.日本のヤドリバエ科のハエの寄主対象のカタログ(2006)があります.これによると,イラガ科のイラガに寄生するヤドリバエは2種記録されているようです.それらは,

ムラタヒゲナガハリバエ Bessa parallela (Meigen)
 イラガを初め,甲虫類,ハチ類,鱗翅類の多数の種に寄生する,寄主選択性の幅が著しく広い種です.

イラムシヤドリバエ Chaetexorista sp. (Chaetexorista属の1種). 
 イラガ,ナシイラガ,ヤママユガに寄生.

です.この他に,おなじChaetexorista属のC. atripalpis Shimaという種は,イラガ科からのみ記録されており,テングイラガ,クロシタアオイラガに寄生するようです.

また,クロシタアオイラガには,上記のほかにPales pavida (Meigen)カイコノクロウジバエが,アオイラガには,Compsilura concinnata (Meigen)ノコギリハリバエとExorista sorbillans (Wiedemann)クワゴヤドリバエが,アカイラガにはExorista japonica (Townsend)ブランコヤドリバエとPales pavida(Meigen)カイコノクロウジバエがそれぞれ寄生することが記録されています.上記の諸種のヤドリバエは寄主の範囲がかなり広いので,あるいはイラガにも寄生するかもしれません.

以上を参考にされて,調査されると飼育されたヤドリバエの種がかなり絞られるかもしれません.

なお,白くて大きい平均棍とありますが,白く見えているのは翅の基部後縁が拡大したもので,覆弁(胸弁,鱗弁,膜弁)と呼ばれている構造で,平均棍はこれに覆われているかなり小形の器官です.

Re: イラガの寄生蝿 投稿者:しぐま 投稿日:2008/08/03(Sun) 21:23:52 No.4752  引用 
アノニモミイアさん
トンチンカンな素人相手にも関わらず、大変詳細な解説を書いて下さりましてどうもありがとうございます。
候補が絞れただけでも助かります。とても参考になりました。
寄生蝿ときちんと接するのは今回が初めてでしたが、自然観察では興味のあるテーマなので折に触れ勉強していこうと思います。初めの一歩。

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