同じ場所で違う角度で撮ったものです。
今度は,昨日,南月山山頂近くで撮ったものです。獲物を捕まえて逆立ちしながら体液をすっているようです。
推定されたとおり2種ともオドリバエ科の種です.
1と2はモモブトセダカバエ属Hybos(ラテン語読みでヒボス)の1種です.頭部が球形;触角の根元より上(前額)で両方の複眼が密着する;口吻がやや長く前の方に突き出す;胸部の背中が強く盛り上がる;後脚の腿節が膨らみ,下面に刺を生やす;翅の中央の室から2本だけ脈を出す,がこの属の特徴です.
この属の日本産の種で脚が広範囲に黒い種は2種分っていますが,そのほかに名前のついていない種(未記載種といいます,未記載種に学名をつけて学界に発表される時には新種ということになります)が日本には多数います.写真の種はこのような未記載種の1種です(要するに学名や和名もない).ですからモモブトセダカバエ属の1種ということになります.
成虫は森林の下草などの上に止まっていて,近くを飛ぶ小形の昆虫を追飛して捕らえ,中身(体液や体内の筋肉などを口吻や唾液で破壊したもの)を吸い取ります.オドリバエに良くあるような求愛給餌(オスが交尾するために事前に捕らえておいた餌の小昆虫をメスに与えて交尾する)は,この属では行ないません.
多くの種は初夏から盛夏にかけて1年に1回成虫が発生します.写真の個体はメスです.
3枚目はモモブトヒメセダカバエ属Hoplocyrtoma(ラテン語読みでホプロキルトマ)の種で,写真では分りにくいのですが,おそらくヤマトモモブトヒメセダカバエHoplocyrtoma japonica Saigusa & Kato(ホプロキルトマ ヤポニカ)だろうと思います.この属は前のHybosに似ていますが,口吻が大変短く,下を向いていて,翅の中央に室がありません.
この属の行動もHybosに似ていますが,写真のようにほとんど逆立ちに近い姿勢で餌を食べるのが特徴的です.
Hoplocyrtoma属は日本に本種を含めて2種学名のついた種がいまして,他に少数の未記載種がいます.
いずれも晩春から初夏にかけて1年1回成虫が出ます.写真の個体はメスで,この属のメスの腹の先は写真のように細長く,先端が尖ったようになっています.
こんばんは。
アノニモミイアさん,詳細な説明ありがとうございます。今までの画像からもっと大きな個体を想像していましたので,おどろきました。
別角度で撮ったヤマトモモブトヒメセダカバエと思われる画像を貼ります。口吻が短く見えるのは角度が悪いのだと思っていました。
初めの摂食中の個体の画像でもやや気にかかる点があったので,「おそらくヤマトモモブトヒメセダカバエだろう」と思いましたが,新しい画像でも同定には問題が残りそうです.日本列島にはHoplocyrtoma属にもう1種学名が付けられた種があります.これはH. watanabei Saiugsa & Katoという種です(和名はありません).両種は次ぎの特徴で分かれます.
H. watanabei 腹部は微細な粉で覆われるために光沢が弱い;小形で体長2.9-3.0mm(雄),3.3-3.8mm(メス);脚は黒く,後脛節の基部1/4くらいが基部に向かって淡色化する;翅はガラス様透明(ほとんど無色透明);オスの交尾器(腹部の先端にある)は上を向く;本州と四国の山地から亜高山帯に生息(1500m以上くらい).
H. japonica 腹部はつやつやと光沢があり,各節の後縁や側部が粉に覆われる;大型で体長は3.6-4.2mm(オス),4.0-5.5mm(メス);前・中脚は黄褐色,後脚は黒く,後脛節の基部2/3と後付節が黄褐色ないし黄色;翅はやや褐色味を帯びる;オスの交尾器は後を向く;中国地方と九州の平地から低山地,ただし本州中部や四国にも良く似た集団があり,この集団では前・中脚が黒く,体長は上記よりさらに大きい.
このような区別点から画像を見ると,どうやら脚が全面的に黒く,後脛節の基部近くだけが淡色のようで,H. watanabeiの可能性もあります.しかし,脚の色や画像だけでは正確な同定はできません.実際に標本を採集して調べる必要があります.採集する機会があったらまたご連絡ください.
双翅類の多くは画像だけでは種までの同定が不可能なものが多いので,撮影したらできるだけ被写体を標本として捕らえる必要があります.採集用具を持っていなければ,両手で軽く叩いて殺すとかの,簡単な方法で捕らえて,紙包みで乾燥しても壊れないようにしておけば,それだけでも分類に詳しい人は同定が出来る場合は多いと思います.
こんばんは。
詳細な説明をありがとうございます。今後は個体を標本として採集しておこうと思います。お世話になりました。