翅の拡大です。
頭部の拡大です。顔は銀白色微毛で輝きます。
・・と、投稿しているうちに、改訂版の北隆館の図鑑が届きました。
すっごーい!!
アノニモミイア様から前振りを頂いておりましたが、さすがオドリバエ、キノコバエ、アシナガバエなどなどが大幅追加です。
ですが、残念ながらこのハエは見当たらないようです。
属はDolichopusと思います.北隆館の,人によってはクズ本と言われる(図版も悪いし,値段も高いなどなど)新訂第3巻にはDolichopus等の属は代表種1種のみしかでていません(Dolichopusは旧版からなぜか1種だけ迷い込んでいますが)が,本属は日本だけで数十種以上生息しています.翅の前縁が肥大していなければ,中央の翅脈が写真のようにジグザグになっているのはD. zigzagという種が台湾にはいます.
持っている標本とそのうち比較してみます.
写真のアシナガバエはやはりDolichopusの1種です.私も沖縄本島,奄美大島,山口県などで採集された本種の標本を多数持っています.
日本産水生昆虫の検索表を使った際に,あなたはcouplet 5を引き違えています.本種は触角第1節背面に多数のsetulaeを生じており,この特徴はあなたの写真でもはっきり認められます.ここで検索表を6に移れば,Dolichopusにたどり着きます.
私の日本産Dolichopusの材料の中でも翅の前縁が本種のように長い距離に亘って肥大している種はこれしかありません.そして,日本からのDolichopusの既知種では,Parentによって,Kofou, Japonから記載されたD. crassicosta Parent, 1926があります.本種の原記載はかなり詳しいのですが,残念ながら全く図がありません.ただし,お尋ねの種は翅前縁については本種の特徴と一致しますし,脚の形質などもほぼ一致します.Kofouが甲府でしょう.それで,問題の種は本種の可能性がかなり高いと思いますが,しかし,最終的な同定の確定にはcrassicostaの模式標本との比較が必要でしょう.
現在のところは写真の種はDolichopus crassicosta Parent, 1926,またはその類似種というところでしょうか.
アノニモミイア様、早速のご教示ありがとうございます。
触角の刺毛の点については、もっと長いものを想像したことに失敗の原因があったようです(勉強不足です)。
新版北隆館3巻で属の特徴を確認いたしました。交尾器のcerciの形状など、なるほど・・。日本産水生昆虫で検索した結果を検証できるので、確実性が高まりました。クズ本なんて、とんでもない!すばらしい教科書として愛用させていただきます。
この種名は確定できないようですが、属が確定できたこと、D. crassicostaか、その類似種と絞り込めたことは大きな喜びです。ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
新訂図鑑の448頁5行目の前脚第1付小節は後脚第1付節の間違いです.ご注意下さい.
この小節の背面に剛毛を欠くHercostomusなども日本には夥しい種が生息しています.これからの季節,谷間の路上の水溜りの周囲などを掬うと一ヶ所でも数種以上が採集できます.日本のアシナガバエ科は海浜性のものや渓流性のDiostracusの研究はかなり進みましたが,他の属はほとんど手付かずに近い状態です.ハナアブ科の多くの種のように腹部に特別の斑紋などないので,取り付きにくい面もありますが,大部分の属で雄交尾器の特徴が解剖しなくてもおおよその形状がわかる点や脚の色彩が結構種間で異なっているので,これらの点に注目してソーティングすると手がかりが得られます.