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一寸のハエにも五分の大和魂・改
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キノコバエ-Leia billineata? 投稿者:バグリッチ 投稿日:2008/02/16(Sat) 22:19:41 No.4295  引用 
こんちは。

 毎年、冬に越冬中の個体が採れるキノコバエの一種です。
 検索では、Leia 属に行き着きました。

 『皇居、赤坂御用地と常盤松御用邸のキノコバエ、シマバエおよびハモグリバエ』でLeia属の記録を見つけたので、確認してみたところ、Leia billineataフタスジエナガキノコバエの記述と一致しました。
 たぶんこれではないかと思いますが、ご教示やご意見が いただけましたら、ありがたいです。

 何卒宜しくお願い致します。

 


Re: キノコバエ-Leia billineata... 投稿者:アノニモミイア 投稿日:2008/02/17(Sun) 00:26:20 No.4296  引用 
「皇居・・・」で本種が正しく同定されているのかどうかは雄交尾器の図が示されていないので,確信がもてませんが,あなたの図示された交尾器の形状はヨーロッパや極東から記録されている本種のそれとは明らかに異なっています.

しかし,キノコバエの場合でも,ヨーロッパ(時には沿海州までを含む大陸旧北区)の集団と日本の集団は雄交尾器にも形態的地理的変異が現われる場合がしばしばあって,これを形態種レベルの認識で別種とするか,亜種とするか,あるいは単に同種内の命名しない地理的変異とするかは各著者の判断にかかわってきています.例えば,Boletina trivittataという種があります.これは笹川・木村の論文では日本産の集団がヨーロッパと同じ種にされていますが,明らかに交尾器の形態に差が見られ,Zeitzevは日本と極東ロシアの集団をsubvittataと言う別種で記載しました.しかし,ヨーロッパでもアルプス系のものと北欧系のものではある程度の変異があり,また北米ではより大きな形態的相違が起っています.一方,ヨーロッパと日本の集団の間でほとんど相違が認められないものもかなりあります.

Handbooks for the Identification of British Insects,MycetophilidaeからL. bifasciata (=bilineata)の交尾器を引用しておきます.Gonostylusがあなたの材料でははるかに幅広い点が異なっています.


Re: キノコバエ-Leia billineata... 投稿者:バグリッチ 投稿日:2008/02/17(Sun) 10:24:21 No.4297  引用 
アノニモミイア様
 ご教示に心より御礼申し上げます。

 ご指摘のとおり、「皇居・・・」に雄交尾器の図が無い点で、正しいのか間違いなのか わからなく行き詰っておりました。
 
 引用いただきました図とは、確かにGonostylusの形状が異なっていると思います。L.bilineataの近似種である事まで確信できたことは、自分にとっては大きな成果です。

 コメントにありました 種か亜種かの解釈などの問題は過去から論議が交わされているように聞いておりますが、変異がある事が生物には当然であることから、大変難しい問題と思います。

 話が変わってしまうのですが、今回の交尾器の画像は、ご覧頂きましたとおり Gonostylusを左右に開いたのですが、この形でよいのかどうか迷っています。
 顕微鏡と、撮影機材の機能から、開かないでの検鏡は、大変見にくい事から工夫したのですが、何か大きな欠点があれば ご指摘いただきたく存じます。

 引き続き、宜しくお願い申し上げます。

Re: キノコバエ-Leia billineata... 投稿者:アノニモミイア 投稿日:2008/02/17(Sun) 13:40:54 No.4298  引用 
「今回の交尾器の画像は、ご覧頂きましたとおり Gonostylusを左右に開いたのですが、この形でよいのかどうか迷っています。顕微鏡と、撮影機材の機能から、開かないでの検鏡は、大変見にくい事から工夫したのですが、何か大きな欠点があれば ご指摘いただきたく存じます。」

どのようなアングルで写真を撮ったり,作図したりするかは,その際にいつも考え込むことになります.要はその種の形質が確実に判るアングル(もっとも良く分かるアングルの意味ではありません)ということになります.これは他の人がその図を自分の標本と比較する時に同一のアングルがとれて,しかもその種の形質が確実に示されるアングルということになります.そうなると,最もアングルの同一性を保つのが可能なのは真横から見ることになります.これも,注意しないと後方が下がったり,逆に前方が下がったりしますので(もちろん背中線と腹中線が同一平面に来ることは必須です),対在形質が完全に重なり合うようなアングルを顕微鏡の下で決めてから撮影や作図をするように心がけています.真横から書かれたあるいは撮影されたものでは,他の人が自分の材料を同じアングルに保って,図などと比較することが可能になります.また真横の他に材料によっては真上または真下から見るアングルがあります.これもピッチングといいましょうか,仮想体軸が前や後に傾くと,形状がかなり異なってきますので,真横の場合よりアングルが採りにくくなります.また,双眼実体顕微鏡では左右の接眼レンズからの像は当然のことながら変わってきていますので,材料の背中線や腹中線を視野の中で縦方向に採ると,たとえ材料が完全に左右対称になるような位置に調整をしても,右の接眼レンズからの像はより右側面が広く(左側に傾いた状態)になり,左の接眼レンズではその逆になります.背中線などを視野を横切るように設定するとこの点は容易に調整が可能になります.

しかし,このような規定のアングルでは形質が良く表わされない場合は,問題の形質がもっとも良く現われると自分が判断したアングルでの作図や撮影を行うことになります.この場合は他の人が自分の材料をこれらの図と比較するときに,かなり慎重に照合する必要が起ります.

このようにしても,種の重要な形質が表わされない場合は,部分的または全面的な解剖を行って,問題の形質の作図や撮影が可能な状態にしていきます.

切断などの解剖しない場合は,材料を展開させることになります.この方法がしばしば用いられているのが鱗翅目の雄交尾器の場合です.鱗翅目では糸角双翅目の2小節に分節した生殖肢に相当するものがvalva(把握器)と言う単一の袋状構造に融合していまして,この内面にしばしば多様な突起や刺毛を生じ,これが重要な分類形質になっています.そのためにあなたのLeiaの写真と同様に,valvaeを左右に開いて,しかもスライドグラスの上でカバーグラスによって交尾器を押さえて,それに基づいて作図や撮影が行われます.この場合は押し付け方によってvalvaの変形やアングルが変わるので,このような図はかなりその点を考慮しながら参照せざるをえません.しかも鱗翅目では交尾器全体をこのように展開した状態にしますと,第9-10腹節背板系のtegumen-uncusの形状にかなりのゆがみが生じます.これと同様のことがあなたのLeiaの交尾器の写真でも起っています.これらが欠点と言えば欠点になります.しかし,鱗翅類ではこの方法が簡便で,スライドとして保存しやすいと言うことから広く行われています(私は各部の形状や関連など機能形態学的形質があまり正確に把握されないので,この方法はあまり好ましいものとは思いませんから,鱗翅目でこの方法をほとんどとったことはありません).しかし,この展開法で種の形質がはっきり表れるのであれば,その目的の範囲では有効なアングルではないかと思います.

ご質問には以上でよろしいでしょうか.

Re: キノコバエ-Leia billineata... 投稿者:バグリッチ 投稿日:2008/02/17(Sun) 16:27:32 No.4299  引用 
アノニモミイア様

 詳細にわたってご解説いただき本当にありがとうございます。
 『特徴が捉えやすい』だけでなく、後で 別の方が比較しやすい事を充分考えなければいけないのですね。
 これが ある意味『本当にわかりやすい』と言えるのだと認識しました。
 基本は側面図であり、これにプラスして、特徴を現す図を加えることが必要ということとですね。
 この事を頭に入れて検鏡したいと思います。
 一方で、今回の画像ような方法も 自分なりに 併せて使ってみたいと思います。

 キノコバエの仲間は大きくなく、また 交尾器は意外に毛が多くて、形態がすっきりせずに わかりにくい印象を持っています。
 時間はかかるかもしれませんが、少しづつ 勉強していきたいと思います。

 引き続き、宜しくお願い申し上げます。

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