以前日本産カバエ属Sylvicolaの種の検索表を示しました.そこではSylvicola japonicusについて原記載の記述と付図が異なる種であるから,この学名は原記載の記述にあう種,すなわち中胸楯板に3本の縦条を持つ種に適用しておきました.しかし,その後,本種の北大の模式標本の検討を行ったところ,北大に残っているsyntypeは原記載の記述とは異なるもので,原記載で図示されているのに相当する個体だけでした.そのために,現状では中胸楯板に4本の縦条が明瞭に現われる図示されたもの(検索表で未同定種種2としたもの)に,japonicusの学名を当てざるをえないことになりました.これも残念ながら暫定処置で,原記載の記述に一致する標本があるいはどこかに残されているかもしれません.無理に今残されている標本を後模式標本(lectotype)に指定してしまうのはまだ時期尚早と思われます.最近発行の北隆館の新訂原色昆虫大図鑑第三巻の392ページでもこのような分類学的処理がなされていますので,皆さんの注意を喚起します.
なお,同書の双翅目の追加分の写真や記述は,同定しようとする標本が所載の種であるか否か,所載されているならば,あくまでも「種あるいは属に確実に同定できること(例えばAus busとか Cus sp.とか)が図鑑の使命である」とするプリンシプルに基づいていると言えます. |
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