53072044
一寸のハエにも五分の大和魂・改
[トップに戻る] [通常表示] [アルバム] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [旧過去ログ] [管理用]
1: ガガンボ類の幼虫でしょうか? (6) / 2: トゲヒメヒラタアブでしょうか? (2) / 3: 京都府で得られたショウジョウバエ (5) / 4: 房総半島海浜のツルギアブ科(不明種?) (3) / 5: 富士山のアブ (2) / 6: クシツノアブ科について (2) / 7: Eupachygaster tarsalisメス? (1) / 8: ネグロクサアブ?の抜け殻 (7) / 9: ミズアブ科?不明種について (5) / 10: ハナアブ科不明種 (3) / 11: Choerades amurensisでしょうか? (6) / 12: Tabanus属? (2) / 13: 無題 (2) / 14: 無題 (3) / 15: ヤドリバエの不明種につきまして (2) / 16: 無題 (2) / 17: これはなんでしょうか? (2) / 18: ハチモドキバエ? (3) / 19: 無題 (0) / 20: 続きです (2) /


[ 指定コメント (No.3966) の関連スレッドを表示しています。 ]

モンカマオドリバエの近縁属 投稿者:茨城@市毛 多少復活(~_~) 投稿日:2007/10/24(Wed) 20:49:16 No.3966  引用 
7月に茨城県北部の山間部で採集した,体長2mm程のオドリバエです.

最初に見た時,図鑑に載っているモンカマオドリバエと思いましたが,翅の翅脈からChelipoda属のようですが,如何でしょうか?


Re: モンカマオドリバエの近縁属 投稿者:茨城@市毛 多少復活(~_~) 投稿日:2007/10/24(Wed) 21:16:05 No.3967  引用 
ついでですが,このオドリバエはElaphropeza属で良いのでしょうか?

体長は2mm程で,前種と同じく7月に茨城県北部の山間部で採集しました.

No.2788の発言でコメントされたように,後頭部の特徴や後脛節に背面剛毛があります.

よろしくお願い致します.


Re: モンカマオドリバエの近縁属 投稿者:アノニモミイア 投稿日:2007/10/25(Thu) 08:42:09 No.3968  引用 
最初のは市毛さんが同定されたようにChelipodaの1種です.Chelipodaとそれの中室が開いたPhyllodromia,さらにCuP脈(従来のA1脈)を欠き,CuA脈(CuA2脈)のみが第2基室から突き出すもの,M1脈の基部が消えるものなど10種足らずが日本列島に分布しています.初夏から晩夏までかなり長期にわたって成虫が見られ,主に森林の林縁に生える下草を掬うと採集できます.個体数は一般に多いのですが,発生期の関係で雄が少ないことがしばしばですので,種の特徴がはっきりした雄を採集するためにはかなり多数を採集しておく必要があります.

二枚目のは同定されたとおりElaphropezaの1種です.このように体色が黒い種は日本列島で4種採集していて,触角の形状,雄交尾器の概形などからこれは八甲田山,熊本の白鳥山,対馬で採集されている種と同じものと思います.私も数頭標本をもっています.しかし,体色が黄色ー橙色の種に比べるとこの手の黒Elaphropezaは個体数が少なく,1頭採集したらその付近を丹念に掬って数を採っておいた方がいいです.色が黒いので採集した段階ではDrapetis属かと勘違いすることがあると思います.

Re: モンカマオドリバエの近縁属 投稿者:アノニモミイア 投稿日:2007/10/25(Thu) 08:50:36 No.3969  引用 
なお,Chelipoda群はChelifera-Hemerodromia群のように幼虫が水生ではないようで,水辺には少なく,沢からずっと離れた山腹でもたくさん採集できます.この群は触角刺毛(arista)がChelifera-Hemerodromia群よりもはるかに長く(普通は触角第3節より長い),また口器も長いので簡単に識別できます.R4脈もありません(南半球温帯にはR4をもって,Chelipoda群の祖先そのものではないかと思ってしまうような種ー未記載属ーも棲息していますが,北半球のはすべてR4を持ちません;同様にChelifera群の祖先そのもののようなのもパタゴニアあたりには棲息しています.アブ類は特にオーストラリアーニュージーランドーパタゴニア地方に原始的な形態をしたのが多産しているようです).

Re: モンカマオドリバエの近縁属 投稿者:茨城@市毛 多少復活(~_~) 投稿日:2007/10/27(Sat) 10:08:29 No.3972  引用 
アノニモミイア様.

 Chelipoda属,Elaphropeza属と色々と情報ありがとうございました.

 ところで,オドリバエの標本の作成方法のアドバイスを頂けませんでしょうか?

現在,中〜大型のオドリバエは翅を揃えて三角紙に包んで乾燥させ,小型種は顕微鏡下で翅を揃えて台紙で押さえて乾燥させています.

特に,旅行先での採集品の処理方法を教えて頂きたいと思います.

よろしくお願い致します.

Re: モンカマオドリバエの近縁属 投稿者:アノニモミイア 投稿日:2007/10/27(Sat) 18:35:55 No.3973  引用 
オドリバエ科などの採集品の処理方法を書きます.

私の場合は体長10mm前後のものは基本的には針刺し標本にします.00-1号針を適宜使っています.これは採集日か冷凍・冷蔵保存した個体の場合です.
6‐8mm前後の場合は針刺し標本と三角紙標本の両方にします.この程度の個体の場合には主に微針で刺します.
以上の標本は乾燥するまで体軸が垂直になるように保って,腹部が下がるのを避けます.
数mm以下の場合は基本的にはすべて三角紙標本にします.

三角紙の紙は薬包紙にも用いられるグラシン紙です(一般的な三角紙用紙).しかしグラシン紙も厚さ,硬さ,処理薬品によってある程度違いがありますので,できるだけ薄くて,柔らかなのを選んでいます(厚いと虫が圧迫され,また油の出やすいキノコバエなどは長期間保存すると翅が紙に密着し,油が乾いて,翅が紙にこびりつきます).文具店で大きいのを希望の大きさ(志賀昆虫普及社の下から2番目の大きさ)に裁断してもらいます.薄い紙なので10枚くらいを厚紙で挟んで裁断するようでして,どこでも喜んで引き受けてくれるものではありません.8−10枚を重ねて三角紙をおります(折り方は錯綜するので説明しません;1枚1枚折るのではありません)ので,裁断して形が同一であることが必須です.

三角紙に入れるのは,ほぼ同じサイズの虫を集めて,標本がなるべく1層になるように広げて包みます.用紙が硬いと,乾燥すると紙に押し付けれらて体が平らになってしまうので,柔らかい紙を選びます(三角紙の底辺の折りを弱くしておくとこれを少し避けれます).一層にしておくと,乾燥しても脚などが体軸かひどくはみ出さず,標本作製のさいに折れません.しかし,体が平圧されるのをさけるのなら,ある程度大きさの異なるものを混ぜることもありますし,2層くらいにすることもあります.その結果,脚や翅が体軸から出っ張っている場合の標本の作製は別の方法をとります.

海外などに行って長期間の採集で,しかも乗り物などに乗ったり,荷物が車で運搬される可能性があるときには,正方形のティシューペーパーを三角紙よりほんの少し小さい三角形に折って,内側の袋にして,標本を包みます.こうしておけば,輸送中に標本が粗面の内袋の中で動かず,傷みません.これをしておかないと,標本が三角紙の中で運動会をして,Tachydromiinaeの触角などはたちまち折れてしまいます.

三角紙標本はボール箱に入れて運びます.なるべく大型で重量のあるものを下にいれて,小形のものは上にして,押しつぶされないように配慮します.箱は水平に保つように努力します.

前にも書いたかもしれませんが,採集中は志賀昆虫普及社の鉱物標本用の丸箱(円形プラスチック容器:カタログでNO.458プラスチック丸型というもの)の9cmのものを使います.この内径の幅で,長さが20cmの紙をペーパータオルの2重のをはがして1枚にし,9cmの1辺の中央から9cmくらい切り込みを入れます.切れ込みの入っていない方を容器の底に敷くようにして,さらに容器壁に沿って折り曲げ,さらに上から覆うように切れ目を入れているほうを折り返します.この中にペーパータオル一枚にはがしたものを幅8mm長さ20cmのストライプにして,8枚入れておきます.このような容器を5-10個持っていきます.蓋に採集場所のメモが書けるようにしておきます.

殺虫菅は3.2×13cmのを使います.この中にも上のストライプを4枚いれて,採集します.殺虫菅の中身が多くなってきたら,プラスチック容器の蓋を開けて,中のストライプを4本取り出し,容器の中に殺虫菅の中身を中の4本のストライプごといれます.虫が容器の中に平均に,しかもストライプに適宜絡んでいるようにします.それから切れ目のある容器の紙が交差するように虫を覆って,さらにその上に柔らかくて水分の多そうな植物の葉(若いカエデ,コアカソ,イタドリなどの葉がいいですね)を1-2枚載せて蓋をします.これをリュックの一番底の温度が上がらないところに水平に収容します.4枚取りだしたストライプは空になった殺虫菅に入れます.こうすれば1日の採集を終わって宿などに帰っても虫は十分柔らかくて,容易に標本整理が出来ます.

宿ではA4の紙を敷いてその上に容器から虫を広げます.プラ板で作った4cm正方形の大変浅いトレーを10個ほど持っていって,これを紙の周りに並べて,その中に採集品を選別しながら入れていきます.針刺しや三角紙に入れる前に,翅が背中側に揃っているのはいいのですが,逆に腹側に羽交い絞めのようになっているのは,グラシン紙のような平滑な紙の上で虫を仰向けにして,細いピンセットで上から翅の腋の下に相当する部分を挟み,軽く紙に虫を押し付けることで,翅基部のクリック機構が作用して,翅が反転して背中側に揃います.これも殺してから時間がたつと筋肉の硬直が解けてうまくいきません.この場合は丹念に翅をそろえるしかありません.クロロフォルムなどで麻酔時間を長くすると筋肉の硬直が持続しますが,交尾器などの筋肉が異常に硬直して,その結果骨化部が変形し,これがKOH処理を行ってもうまくもどらないので,あまり薦めれません.

以上が採集品の処理です.これはオドリバエに限らず中型以下の双翅目の場合に一般に行っています.

Re: モンカマオドリバエの近縁属 投稿者:茨城@市毛 多少復活(~_~) 投稿日:2007/10/27(Sat) 20:15:29 No.3974  引用 
アノニモミイア様.

詳細な解説ありがとうございます.

筋肉の硬直が解けると,翅の反転が困難なのですね.
今まで,逆に硬直が解けた頃に反転させようとしていたので,上手く出来なかったようです.

ありがとうございました.

Re: モンカマオドリバエの近縁属 投稿者:アノニモミイア 投稿日:2007/10/28(Sun) 02:08:18 No.3975  引用 
標本作製法も入力したのですが,パソコンの操作ミスで消去してしまいました.また時間の余裕がある時に書きます.

Re: モンカマオドリバエの近縁属 投稿者:茨城@市毛 多少復活(~_~) 投稿日:2007/10/28(Sun) 07:57:10 No.3977  引用 
アノニモミイア様.

私も,時折操作ミスで消去されてしまうことがあったので,少しでも長い文章は,別のWordやWindowsメモ帳等のソフトで書いて,その文章をこのコメント欄に貼り付けるようにしています.

コメント欄に書いている時に,間違えてESCキーを押すと全てクリアされてしまうのは辛いですね(^_^;)

処理 記事No 暗証キー

- Joyful Note -
- Antispam Version -