Ochtherohilara亜属は日本列島に私の手元の材料だけに基づいても約40種生息しています.ほかに中国,韓国,沿海州,北米にも分布していますが,これらの地域での分化はとても日本には及びません.宮崎県南部山地では同一場所に6種棲息しています.そして,既知種はH.(O.) mantis FreyとH. (O.) mantispa Freyの2種だけです.
前種は,大型種で♂の胸背と腹背がかなり明るい灰色粉で覆われおり,R4脈先端がR2+3脈とM1脈の先端のほぼ中間で終わり,メスの腹部が銀白色に光るので容易に他の種から区別できます(分布:広域分布種;本州,四国,九州).
一方,H. (O.) mantispaの方は小形で類似種が多く,識別が困難です.本種は一般的に言えるのは腹部が細長くて,真っ黒で光沢があり,翅はほとんどガラス様透明で,雄交尾器が腹部の体軸に対して,乾燥標本ではやや下に傾く,と言う傾向があります.本種は飛騨山脈のものですが,これに似たのが他の地域にも少数ありますので要注意です.本物のmantispaは飛騨山脈に限らず長野,山梨の山地には局所的ですが分布しているようです.
というわけで,写真の種はmantispaではないと思います.
本亜属は雄交尾器にわずかの相違しかでませんので,交尾器を解剖しないと種に分類はできません.
一度書いたことがありますが,mantisの♂をもっぱら♀への餌にする近似種があります.やや大型で,♂の腹部の前半が乳白色,後半が真っ黒の種でして,これは同一水面を同時期に探餌行動をとるmantis♂をもっぱら狩って♀の求愛餌にします.この種は本州中部山岳にいて,個体数は当然のことながら,mantisよりかなり少ないものです.
アノニモミイア様.
Ochtherohilara亜属が,日本だけで40種程分布しているとは驚きでした.もっとも,以前Hilara属が300種と書かれていましたから,当然かもしれませんね.
実は,Ochtherohilara亜属がどの程度記載されているのか,旧北区のカタログを見たのですが,カタログではHilara属を亜属で分けていないので全く予想が出来ませんでした.(ざっと見たところmantisとmantispaの2種だけ?)
また,BioSystematic Databaseを見ると,Hilara属は世界で500種ほどが記載され,Ochtherohilaraを独立した属として考えている研究者もいるのですね.(Ochtherohilara basiflava Yang & Wang, 1998)
色々と,勉強になります.
ありがとうございました.