はなあぶ短報用第2弾、四国剣山中腹で採集したコシアキトゲアシイエバエです。
「日本のイエバエ」では、英文と和文で分布域に食い違いがあるようですが、四国からは未記録のようです。
何か問題点、疑問点などありましたらご教示ください。
よろしくお願いします。
ところで、ハマベニクバエの項の「瀬戸内海川」は瀬戸内海側の誤記です。
ニクバエ科の属の取り扱いについては悩み多き・・・というのが現状です。
世界のニクバエ科の目録をまとめたT.Papeは属を大きく捉えてそれまでの属を亜属として取り扱って場合が多いです。
それに対して日本のニクバエ科の代表的研究者である倉橋先生は♀の形質から考えるとやはり亜属ではなく、多くが以前のような属としての取り扱いにした方が良いのではないかとのお考えで、多分、新しい日本産昆虫目録が出れば倉橋先生の取り扱いになるのではないかと考えられます。しかし、これはまだ未出版ですので、現状ではハナアブ誌のリストの学名に従っていただくのが出典を追えるという点では良いのでは無いかと思います・・・(あれはPapeのリストを元に作成しました。)(最新のリバフロ目録の方は一部倉橋先生の考えが採用されているようですが、何せ全種が出てるわけではないし、その出典が追えないという点で問題がありますし・・)
こんなところです。
ご無沙汰しております。
病気のほうは、専門医の診断により線維筋痛症の典型的な症例と確定し、本格的な治療を受け始めています。どうも、幼児期に既に発症していたようで・・・。ともかく、ようやく医者のたらいまわし状態を脱出できそうです。
さて、ハマベニクバエですが、T. Papeの"Catalogue of the Sarcophagidae of the world (Insecta: Diptera)"によるシノニムリストによりますと、最初に記載されたのはインドをタイプ産地とする
Musca cinerea Fabricius, 1794
でして、これがFJCなどで使われてきているのですが、これは今日ミバエ科に分類されている
Musca cinereus Hrris, 1780
と、今日正体不明の
Musca cinerea Villers, 1789
のJunior primary homonymとなってしまって無効となってしまっています。
そして、次に行われた記載がスリランカをタイプ産地とする
Sarcophila alba Schiner, 1868
でして、これが現在有効とされています。
また、中国四川省渡口をタイプ産地として記載された、
Leucomyia dukoicus Zhang & Chao, 1988
というものがあるのですが、これもハマベニクバエのシノニムとされています。大陸の環境だと、内陸部にもハビタートがあるようですね。よりにもよって、あのじめじめした四川省とは・・・。
世界的な分布は中国、日本、インド、ラオス、フィリピン、スリランカ、台湾、タイで、中国では湖北省、遼寧省、四川省、広東省に分布しているようです。
ニクバエ亜科の分類ですが、T. Papeらのチームによる遺伝子解析によると、確かにT. PapeがSarcophaga属にまとめているグループは短期間に急速に種分化を起こしたまとまりのいい群のようですね。その一方で、倉橋先生の雌の生殖器の形質による形態比較もかなり重要だと思うんですよ。短期間に分岐したグループの内部の詳細な系統追跡は、遺伝子解析の苦手とする分野ですし、それにあれだけ膨大な種数に分岐したのを単にひとまとまりにしちゃうというのも、思考放棄の部分があると思いますので。
ハエ男様、いつもお世話になっております。
ウミユスリカ様、ご無沙汰しております。よいお医者様が見つかったようで何よりです。お体には十分お気をつけください。
ご教示ありがとうございました。
ニクバエのほうはalbaで短報を作成します。
内陸部といえば、ハマベニクバエ(およびその他海浜性種)は本当に海浜だけにしかいないか、ということで、琵琶湖沿岸の砂地に目をつけて一度採集に行ったのですが、場所が悪かったか不発に終わりました。
「駅から歩いていけるところ」を選んだのが敗因のようで、時間があれば今度は車で行ってみようと思います。