盛夏になってオドリバエの発生は一段落というところですが,この時期を謳歌しているのが熱帯系のオドリバエたちです.Empis (Coptophlebia),Syneches, Hybos(これはむしろ暖温帯系),Elaphropezaなどがそうです.
写真のオドリバエは一番大事な形質(M1脈の先端が翅縁に達しない)が分りませんが,ほとんど確実にCoptophlebia亜属の種です.この亜属は日本に40種くらい棲息しています.学名が付けられたのはパグリッチさんの示された3種のほかに最近沖縄からE. (C.) urumae Daugeronがあります.命名者はフランス人ですが,私の希望で沖縄の古称「うるま」にしてもらったので,このような種名(種小名)になっています.Empis亜属が本亜属に形態的には大変にていて,これはM1脈が翅縁に達しています.しかし,この亜属はヨーロッパが主産地で,日本列島には数種しか棲息していません.ですから,埼玉の今の時期ですから写真の種はCoptophlebia亜属のことはほとんど疑いないでしょう.
Coptophlebia亜属の種は主に雄の交尾器の形態や体長などを目安に識別できます.東南アジアからはかなりの種が記載されていますし,それ以上に未記載種があります.またアフリカ,南米などにもこの亜属は分布しています.ヨーロッパは20種未満です.
この亜属で冷温帯ないし亜寒帯の1群があります.E. (C.) hyalipennis群というので,acrostichalsを欠き,第8腹節背板が左右不相称の特異な群です.これは晩夏から晩秋にかけて冷温帯上部から亜寒帯下部に発生します.これからですが,日本列島の中でかなり分化しています.北,東日本の山地帯上部から亜高山帯,西日本の高い山の山頂付近に棲息しています.林間で群飛していますので目に付きやすいものです.日本アルプスの亜高山帯には雄の翅が白っぽくて,後腿節の基部に白くふさふさした長い毛の束を具える種などがいて,なかなか面白い群です.
アノニモミイア様
早速のご教示に 深謝申し上げます。
一番大事な形質(M1脈の先端が翅縁に達しない)という点は、画像からは判断できないかと存じますが、確かに、翅端に達しないで 消失しています。
この亜属の種が、日本に40種くらい棲息しているとは、予想外に多いので驚きです。かなり分化しているのですね。
同じ日に、Hybos sp.が2種採れましたが、これも夏に多いという印象です。
引き続き、注意して探してみます。
今後とも 何卒宜しくお願い申し上げます。