写真のオドリバエはOcydromia属ではなくてSyneches属の種です.OcydromiaやLeptopeza,Leptodromiella,さらにBicellariaなどのいわゆるOcydromiinaeのオドリバエは,口吻が大変短く,この点でSyneches, Hybos, Syndias等のいわゆるHybotinaeのものと区別できます.ただし,Chillcottomyiaや日本から記録されていませんがEuhybus(日本に3種確認)の場合は口吻があまり長くないので,Ocydromiinae的な感じを受けます.
Syneches属は一見Hybos属に似ていますが,後頭部のふくらみを欠き(結果的に頭部は半球状),cell CuA (いわゆるanal cell)が第2基室より短く,雄交尾器が左右相称である,などの点で区別できます. SynechesにはEpiceia,Parahybos, Synechesなどの亜属がみとめられていますが,必ずしも自然群ではありません.しかし,この分類によりますと,今回の写真はR4+5脈とM1脈が先端に向かって接近するので,Epiceia亜属に含まれます. この亜属は日本から,S. grandis Frey, 1953, S. rufitibia Frey, 1953(grabdis rufitibiaとして原記載),S. shirozui Saigusa, 1962,(南西諸島から)S.claripilosus Saigusa, 1964, S. flavipalpis Saigusa, 1964, S. amamiensis Saigusa, 1964が記載されていますが,本土にもまだ数種ほどに未記載種があります.これらのうち,grandis, rufitibia, shirozuiは後腿節がかなり肥大し,下面に強い棘を生じています.Syneches亜属も本土に数種分布していますが,これらはほとんど未記載です. 写真の種は中脛節が赤褐色でS. rufitibiaに相当する種ですが,本種やgrandis,shirozuiを含めて,どうも地理的変異がみられるようで,決定的なことがいいにくい面があります.しかし,現在では写真の種はrufitibiaと同定して良いだろうと思います.本種は中部地方から九州にかけて一般に平地から低山地に普通の種で,4月から5月にかけて出現し,林間の空間をほとんどホバリング飛翔を行いながら,近くを通る小型の昆虫を捕らえて吸血します.ランダムに襲うので,しばしば甲虫を捕らえることもありますが,このような場合にはすぐに放棄します.餌が双翅類などの場合は近くの葉に止まって,前脚でぶら下がるようにしながら,餌を摂食します.このような行動は他の種でも観察されています.配偶行動は観察されていませんが,雌雄とも自ら狩りをしますので,Empisなどのような求愛給餌行動はありません.S. claripilosusに近い種が,青森県奥入瀬で数頭が地上2mくらいの位置で群飛しているのが観察されており,これはmating swarmであったと考えられます.
アノニモミイア様。
大変失礼しましたm(__)m 検索表の文面を一部読み飛ばしてしまったようです。 種名まで判明して大変うれしく思います。 ありがとうございました。 |
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