個仕掛けたところシジュウカラが営巣し、先日巣立ちました。雛鳥の死骸や骨は無く、全員無事育ったのだと安堵したところです。巣箱を掃除したところ、産坐の下に複数の蠅と思われるサナギがありました。トリキンバエのサナギでは無いかと思うのですが、ブログの主様は研究者様でしょうか?また、かつて信大におられた内川公人先生の論文では雛鳥に寄生するとありますが、巣箱の中で雛鳥を食べてしまうようなことは無いのでしょうか?大鹿の地名が出てきますが、南アルプスの様な高山が近い地域で調査されたことはおありですか?
喜久山 様.
小川ら(1989)によると,Protocalliphora トリキンバエ属の幼虫は吸血性とのことです(吸血時以外は巣材の中で生活する).
小川 竜・堀浩二・岩佐光啓. 1989. 十勝におけるトリキンバエ類の生態: 幼虫・蛹期間、化生および寄主特異性. 日本応用動物昆虫学会大会講演要旨, (33): 67.
また,Iwasa & Hori(1998)によると Trypocalliphora braueriヤドリトリキンバエの場合,アオジ等の雛の皮下に寄生するとのことです.
Iwasa, M., Hori, K. 1998. A subcutaneous bird-parasitic blowfly of the genus Trypocalliphora Peus newly recorded from Japan (Diptera : Calliphoridae). Jpn. J. Sanit. Zool., 39(3): 267-270.
倉橋(2000)によると,トリキンバエとマルヤマトリキンバエの2種がシジュウカラに寄生するとのことです.
倉橋 弘. 2000. レファレンス・ミュージアムに持ち込まれたトリキンバエの2未記載種. 昆虫と自然, 35(9): 27-30.
喜久山 様
Trypocalliphora ヤドリトリキンバエ属の海外に分布する種では,皮下寄生する部位により雛が盲目となるため,生存に影響するという言及があります.
A. B. Kerimov, L. A. Lavrenchenko & A. L. Ozerov, 1985.
Calliphorid (Diptera, Calliphoridae) – parasites of nestling great tit (Parus major) and nacissus flycatcher (Muscicapa narcissina).
Byull. Moscow. Ova. Ispt. Priro., Otd. Biol. 90(1):37–39.
以下のリンク先で翻訳が掲載されています.p.50-51.
http://larus.c.ooco.jp/bfea10.pdf
Iwasa & Hori (1988) の図によると,目の上に寄生する場合があるので,国内でも似たような事例が発生するかもしれません.
私は鳥の巣以外の場所でトリキンバエ類成虫を採集していますが,大滝山と乗鞍岳の高山帯,西穂高岳と白山の亜高山帯,他に岐阜県内の標高約1000m 以上の山で採った事があります.
他には一例だけ,4月に低山地で採集しました.
皆様、おひさです。ケンセイです。
最近、双翅目談話会のシラミバエ屋Kさんよりトラツグミの古巣から見つかったハエの蛹が羽化したので見てほしいと標本が送られてきました。それで、トリキンバエとマルヤマトリキンバエについてはファウナヤポニカでたどれるのですが、ヤドリトリキンバエとシナノトリキンバエの文献を持っていないので、もしヤドリやシナノだったらギブアップするしかない状況です。
ということで、もしもヤドリトリキンバエとシナノトリキンバエの文献情報をご存知でしたら教えていただけるとありがたいです。
以上よろしくです。
p.s.私は今年からファネルトラップを自宅の庭と狭山丘陵に設置 して1ヶ月に1回程度の回収頻度で調査を継続しています。 誘引剤はアカネコール、殺虫剤はバポナです。 それで、今までの回収標本をざっと見てのコメントです。 ・採集品はコウチュウとハナバチがメインでたまに脈翅や蛾 類が入ります。一番入ってほしい双翅目はほとんど入りま せん。 ・構造的に墜落形式のトラップには双翅目や半翅目は入りづ らいようです。 ・来年はもう少し双翅目が入るようなマレーズトラップ的 誘引トラップを工夫したいと思います。
シナノトリキンバエの原記載は信州昆虫学会の会誌「New Entomologist」にありました。
Hiromu Kurahashi Japanese species of Orinthoparasitic Blow Flies:Protocalliphora and Trypocallophora (Diptera:Calliphoridae) 42 (1,2)8-15 1993 (一応、トリキンバエ類4種の検索あり)
これによると、シナノトリキンバエは上下鱗弁が白色、中胸気門が黒色、翅の第2、第3縦脈結節部の下部に毛を持たないこと、後脛節に 3〜4本の前腹剛毛を持つことでマルヤマトリキンバエとは区別され、前脛節に1〜2本しか後剛毛を持たないことからトリキンバエとは区別されます。
ヤドリトリキンバエは鱗弁が明るいオレンジ色、翅の基部が♂で茶系オレンジ色、♀が明るいオレンジ色で、であることで識別できます。(ヤドリトリキンバエは幼虫がヒナの皮膚内に潜り込むタイプだそうなので、幼虫の形態は他3種とはかなり異なるようです。)
ハエ男様、どうもです。
早速のご教示ありがとうございます。 New Entomologistにシナノトリキンバエの原記載があったのですね!さっそく元本も取り寄せようと思います。
それでは近日中に標本をチェックして結果を報告させていただきます。
ではでは。
ハエ男様、どうもです。
さっそく昼休みに件の標本をチェックしました。 それで、鱗弁は褐色で、中徑節腹面に1剛毛があったので、 トリキンバエ Protocalliphora azurea になりました。
取り急ぎ報告まで。
|