はなあぶ37号に詳しく書かれていますが 最近、今までに採集したイエバエ科の同定を試みて思ったことを書き記しておこうと思います。 (一言で言うとイエバエ科の同定はとても難しい!) (今までにも数種ほど同定したことはありますが、この時も似たようなことを思ってた気がします。)
属の同定について ・書籍『日本のイエバエ科』のみで属の同定を行うのは以下の理由等により難しい ・検索表上で属の特徴を網羅出来ていないために、途中で検索表を辿れなくなることがある ・一部誤植がある
・属の同定ははなあぶ37号、44号や海外の文献等を併用して行うとよい.
種の同定(他の様々な分類群にも言えることかもしれないですが。) ・書籍『日本のイエバエ科』の検索表上では種にたどり着けても、『日本のイエバエ科』の種の記載内容と各形態が異なることがあり種の判断に迷うことが多い ・各部位の剛毛の差異、色彩の差異...etc. ・(種によっては変異の幅が広い?) ・この場合、他文献の参照、オスメスの交尾器の精査、同定済みの標本との比較等をすべきである ・(解明度がそもそも低い?ことが書籍『日本のイエバエ科』のみで種の同定をすることが難しい理由の一つでもありそう。)
種の同定でつまづいたり、保留にしたりした例として...
その1 先日掲示板に投稿したMyospila argentata(シロマキバイエバエ)メスは、 ・palpusの形態 ・腹部の色彩 ・basicostaの色彩 等が『日本のイエバエ科』の記述と異なっていて、同種と判断してよいのか迷いました。
その2 検索表上ではMyospila fravibasis(ハラアカマキバイエバエ)(性別はメス)にたどり着いたが ・手元の個体について、R1上に刺毛が生えている(日本のイエバエ科の記載内容ではR1は裸) ・頭部のorsの数、脚の各部位の剛毛等に明らかな差異がある ・腹部背板3節と4節に黒班がない(日本のイエバエ科の記載内容では三角形の黒斑有) 等、記載内容との差異が大きいので種の同定を保留にした。
イエバエ科 で過去ログを辿ると、同定の大変さに関する内容が多数出てきますね…。 今までにも何回かその内容を見た気がしますが、改めて同定の大変さがわかった気がします。
ハラアカマキバイエバエについて,はなあぶ54号で岐阜県の追加記録の投稿に書いた点ですが, この種は小盾板側剛毛の下(小盾板側面)に毛は無く,小盾板腹面に見にくい細かな毛があります.
他には検索表の最後で,マキバイエバエとオオマキバイエバエの違いである小盾板の色は,比べないと分かりにくいかもしれません. 今まで調査した標本では基節の色が,マキバは黄色,オオマキバは暗褐色のようです.
大宮様 ハラアカマキバイエバエほか、マキバイエバエに関する情報を共有してくださりありがとうございます。 はなあぶ54号の内容も見直してみました。 --- 大宮さんのおっしゃるとおり、腹面にソケットのない細かな淡黄色の毛が生えています。 (写真を添付しました。) また、その2のところで「R1上に刺毛が...」と書きましたが 日本のイエバエ科のp.223のf図(flavibasis♂)を見ると、R1上に刺毛が生えてるように見えます。 ---- 日本のイエバエ科の記載文と違いはあれど、本個体はハラアカマキバイエバエと判断して良さそうです。
全形、翅、ほかの写真も添付しておきます。 本当にありがとうございます。
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