前述の標本の胸背の状態が悪いので、別の標本をupします。
札幌近郊の中山峠付近で採集したルリハラオドリバエの1種です。前の写真と同種かと思われます。
Key to the insects of Russian Far Eastに収録されているEmpididaeのKeyで検索すると、E.(A.) claricolor Freyと思われますが如何でしょうか?
写真で見えない特長としては、胸背にはacを欠き、dcは1列。複眼は明らかに離眼的。Halterは淡色で、基部が褐色を帯びる。胸背から腹部にかけての剛毛は暗色で、一部淡色毛が混じります。
Empis属Anacrostichus亜属に該当する種は日本列島に15種内外分布しています.中には極東ロシアと共通種もあります.本亜属はacrostichalsを欠如することを主要な特徴にしていますが,いくつかの系統が混在している可能性があります.上記のうち10種ほどは日本産ではclaricolor-cyaneiventris群に属するものです.茨城と札幌のものはこれらの中でもご指摘の通りclaricolorに含みうるものですが,これにもやや地理的変異があり,北海道と本州中部のもおはある程度の差がみつかります.ですから厳密にはclaricolorは本州のものに当てるべきでしょう.cyaneiventrisというのは雄の腹部が濃藍色の金属光沢のある種で,これには少なくともほかに2種あります.真のcyaneiventrisは雄交尾器が腹端よりやや前方の腹面に位置するので,腹端は丸みをおびて,そこには交尾器が下方に突出していません.近畿から九州にかけて普通の種です.claricolorを含めてこれらの種の識別には雌の翅の色彩もかなりよい区別点になります.
なお,cyaneiventrisの配偶行動については,1974年の朝日=ラルース週刊世界動物百科No. 169の169ページ(偶然号数と同じですね)に紹介されています.
アノニモミイア様、詳細な解説ありがとうございます。
色々な双翅目を調べて見たいと思いながらも、身近に詳しい人がいなかったので、非常に感謝しております。今後もよろしく御願い致します。