このR4脈を欠く種類は,Anthepiscopus属と思われますが,如何でしょうか?
Iteaphilaは同定された通り,I. nitidulaです.本種は日本でも広く分布していて,春にヤナギやカエデの花に集まっているのが採集できます.雄交尾器に背板葉が方形で長く伸びるのが特徴です.Anthepiscopus属も数種日本にいますが,私のところの標本はSinclairのところに行っていて,彼が研究することになっているはずです.お尋ねの種も多くはないのですが各地で取れます.IteaphilaのR4が失われたようなものです.
三枝 様.
やはり,Anthepiscopus属も複数の種類が日本にいるのですね.「はなあぶ」にでも記録しておきます.
未整理の標本箱を探したら,やはり県北山地で採集したIteaphila orchestris Melander, 1902ナミクチナガハナオドリバエが見つかりました.
気になったのが,北海道大雪山銀泉台で採集したこの個体です.
hypandriumの先端の形状が,全北区に分布するIteaphila macquarti Zetterstedtに良く似ています.
北海道大雪山銀泉台の個体の全形図です.
I. orchestrisもI. macquartiも市毛さんの同定の通りです.このほかにI. saigusaiというのが奥志賀高原で採集されています.5月31日に私が採集したホロタイプの雄1頭が知られているだけです.そちらに適期に採集に行かれる方は,ヤナギやカエデの花を狙って探してみてください.この種では,市毛さんが図示された3種の雄交尾器のようには背板葉が三角形や方形に伸びていません.
I macquartiは日本から記録されていたとばかり思っていました.理由はShamishevとSinclairのこの仲間のrevisionの論文作成の折に,私のIteaphilaのコレクションは全部貸し出したので,その中にI.macquartiの大雪山の標本も多数含まれていました.しかし,今彼らの論文を見直してみると,なぜか本種の標本記録の中に私の大雪山の材料が含まれていません.しかも,彼らから返却された標本の中には本種について彼らの同定ラベルがついた多数の大雪山の標本が入っています.
カナダとロシアで別々に研究してきたのを共著にしたので,いろいろと手違いがあったのでしょう.ちなみに本来なら標本の提供者として謝辞に述べるべきリストのなかに私の名前も欠落しています.Iteaphila saigusai Shamishevという新種をこの論文の中で記載していながら,です.
このような次第で,私も日本昆虫目録の中では彼らの論文に従って,I. macquartiを含めていませんでした(お粗末ながら,これも今回の市毛さんの投稿で気づきました).
三枝 様.
了解しました.
I. macquartiの記録が抜けていたのですね.
これも「はなあぶ」に投稿しておきます.
ありがとうございました.