ミバエの1種 投稿者:アーチャーン 投稿日:2008/08/17(Sun) 09:26:55 No.4783 今年の7月18日に東京都世田谷区の西部で撮ったミバエです。 このミバエの翅の模様はクロハスジハマダラミバエとよく似ており、Anomoiaの1種だと思うのですが、クロハスジとは体色が随分違います。また、このクロハスジハマダラミバエに関して調べてみると色々と判断に苦しむことが出て来ましたので、お伺いを立てる次第です。 先ず第一に、このミバエはクロハスジハマダラミバエでしょうか。 次に、このクロハスジハマダラミバエの和名ですが、九大の目録を見ると他のAnomoiaの和名はみな○○○ハススジハマダラミバエとなっています。このミバエだけが、「ス」が一字しかないクロハスジハマダラミバエで正しいのでしょうか。 また、学名の方は九大の目録ではAnomoia permundaとなっています。しかし、外国のサイトと参照すると非常に良く似たA. purmundaと言う種類が沢山出て来ます。permundaはpurmundaのmiss spellingだと書いているサイトもありますが、別種の様に書いているサイトもあります。A. permundaとA. permundaは別種なのでしょうか、それとも、どちらかがmiss spellingなのでしょうか。 皆様、かき入れ時で御多忙を極めて居られると思いますが、何卒宜しく御回答下さる様お願い申し上げます。 添付:4783.jpg (63KB) Re: ミバエの1種 - アーチャーン 2008/08/17(Sun) 09:27:42 No.4784
前から Re: ミバエの1種 - アーチャーン 2008/08/17(Sun) 09:28:49 No.4785 斜め前から Re: ミバエの1種 - 茨城@市毛 2008/08/17(Sun) 12:40:02 No.4787 アーチャーン様. 第1前縁室に透明な部分が見えるので,クチジロハススジハマダラミバエA. leucochilaの可能性があります. 学名の件については,旧北区のカタログを見てもAnomoia permunda (Harris,1776)となっています. 和名の件を含め,ここらへんは歴史的な経緯を知っている専門家に聞かないと難しそうです. 現在まとめているハナアブ科でも,論文の元となっている文献を調べていったら,図版の学名が間違っているのを見つけ,この間違いが原因で個体変異が新種として記載された種類を見つけました. 分類は,古い文献をどれだけ集めて読んでいるかで,見解が異なることもありえる難しい学問ですね;^_^) Re: ミバエの1種 - アーチャーン 2008/08/17(Sun) 16:30:12 No.4793 市毛様 早速の御回答有難う御座います。 九大の目録でAnomoiaを参照すると、本州に産するAnomoiaはクロハスジ(A.permunda)、クチジロハススジ(A.leucochila)、チャイロハススジ(A.vulgaris)、ツマモンハススジ(A.apicalis)、オスグロハススジ(A.okinawaensis)の5種となっています。写真のミバエを見ると口の辺りが白いので、それではクチジロハススジではないだろうかと冗談で言っていたのですが、冗談からコマが出た感じです。 また、permunda、purmundaを科学用語の語源に関するラテン語辞典で調べてみますと、permundaはper(非常に)+mundus(ギリシャ語起源:綺麗な、清潔な)で意味が通りますが、purmundaは意味付けが出来ません(地名の可能性はありますが・・・)。九大の目録に従ってA.permundaとすることにしておきます。 追記:宛名が間違っておりました。大変失礼しました。お詫び申し上げます。 Re: ミバエの1種 - アノニモミイア 2008/08/18(Mon) 00:47:40 No.4794 本種の学名のpermundaとpurmundaは紛らわしい上に研究者によって使い方が異なり,簡単ではないですね. 本種は英国Kentから記載された種です.その英国で出版されているHandbooks for the identification of British insectsのシリーズでKloet & Hincks (1976)のA check list of British Insectsでも,White (1988)のTephritid Fliesでも,purmundaを用いています.このほか,Shiraki (1933)のA systematic study of Trypetidae in the Japanese Empireでは本種の原記載の出典を引用しながらPhagocarpus purmundusを用いています.中国のSing-Jian Wang (1996)のThe fruit flies of the East Asian Regionでも,本種の原記載の原綴をMusca purmunda Harrisとして,種の項目でもAnomoia purmunda (Harris)としていますが,それでもRemarksの中で,『The Eastern Palaearctic specimens of A. permunda usually have・・・・」と多分うっかりpermundaを使っています.1988にBishop Museumが中心に編集したオーストラリア・大洋州のDipteraのカタログでも,属の模式種としてMusca purmundus Harrisを使っています. 一方,permunda派はHawaii Universityが1977年に出版した東洋区のカタログではAnomoiaやRhagocarpusの模式種として,Musca permunda Harrisを用いています.また伊藤先生(1984)のDie Japanischen Bohrfliegen, Liefrung 2では本種の項で,本種の原記載出典を示して,模式種としてMusca permunda Harris, 1776を示しています.また,旧北区のカタログでは市毛さんが指摘している通り,種の項でも属の模式種の項でも本種の種名にpermundaを使っていますが,種のところでシノニムの項にはpurmundaが全く示されておらず,著者がこれら二つの学名をどのように考えているかがわかりません. なお,ラテン語の形容詞purusにはcleanの意味があるようで,同様にラテン語のmundusにはworld, earthの意味のほかに,nice, neatの意味があります. Re: ミバエの1種 - アーチャーン 2008/08/18(Mon) 17:26:25 No.4795 アノニモミイア様 色々と情報有難う御座います。1776年では、原著記載論文を入手するのも、国立の研究機関でないと難しいと思います。 イチョウの学名Ginkgo bilobaの様に、ぎんなん->銀杏->ギンキョウ->Ginkyo->Ginkgoと、誤読誤記が重なって意味不明の奇妙な文字列になってしまった例もある位で、当初の学名が何処かで2通りになってしまったのかも知れません。 何時も詳細な情報を有難う御座います。今後ともよろしくお願い申し上げます。 |