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エゾベッコウバエ 投稿者:ハエ男 投稿日:2006/09/15(Fri) 15:54 No.2690
画像投稿するのは久しぶりです・・・ネタなかったしなあ・・

岐阜県で得られた獲物の中にエゾベッコウバエNeuroctena analis がありました。ハナアブ誌No.10で倉橋先生が初めて記録した種類です。

ぱっと見では一連のDryomyza属の種とは区別しにくいですが、翅脈(r1)に刺毛がはえてるので、他のDryomyzaとは区別できます。




添付:2690.jpg (24KB)
Re: エゾベッコウバエ - ハエ男 2006/09/15(Fri) 15:57 No.2691
♂ゲニも特徴的で、倉橋のDryomyzaのレビジョン1981に出ているキイロベッコウバエのように大きく曲がっているのですが、骨片が飛び出す方向がこのレビジョンに出ている種とは逆の方向に突出しています。

Re: エゾベッコウバエ - ハエ男 2006/09/15(Fri) 16:03 No.2692
とりあえず、これまでに記録されたのは根室、早池峰山、塩原温泉(栃木)ということなので、今回の岐阜県下呂の記録が西限ということになるのでしょうか・・・



Re: エゾベッコウバエ - 三枝豊平 2010/12/24(Fri) 16:30:05 No.6682
ベッコウバエのついでに本掲示板の過去のを見ていたら、ハエ男さんの4年前の投稿に気付きました。

写真の個体をハエ男さんはNeuroctena analisに同定していますが、この原因は倉橋博士の「はなあぶ」10号の写真のキャプションが入れ違っていて、それをそのまま信用されたためでしょうか。写真はc、dがNeuroctena analisになっていますが、本当はc、dはParadryomyza spinigeraであって、真のN.analisはaとbです。ですから、ハエ男さんはご自分の標本をNeuroctena analisと同定したはずです。

しかも、No.2692では、
「これまでに記録されたのは根室、早池峰山、塩原温泉(栃木)ということなので」として、今度は倉橋論文の検査標本の記述で、ハエ男さんはParadryomyza spinigeraの採集データを引用されています。

ハエ男さんの標本は、触角もやや前方を向き、後腿節腹面の先に近く小棘を列生していて、明らかにParadryomyzaであって、Neuroctenaではありません。

というわけで、ハエ男さんの岐阜県の標本はParadryomyzaですが、問題は種です。幸いハエ男さんはNo.2691に♂交尾器を示されています。この写真と極東ロシアの双翅類の検索表にあるOzerovさんによる♂交尾器のsurstylusの図を比較すると、ハエ男さんの個体はP. spinigeraではなくて、Paradryomyza setosa (Bigot, 1886)に相当すると思います。

今回はベッコウバエについていろいろと問題点が分かりました。私も大変勉強になりました。最近の本掲示板への二つのベッコウバエ科の投稿を踏まえて、日本産のベッコウバエ科は以下のように整理されるのではないかと、勝手に解釈しています。

Steyskalomyza hasegawai Kurahashi, 1982 トゲベッコウバエ 分布:北海道、本州北部

Paradryomyza setosa (Bigot, 1886)
 Neuroctena analis Furuta, nec.Fallen (本掲示板のハエ男さんのデータ) 国内分布:本州(岐阜県)
Paradryomyza spinigera Ozerov, 1987 チシマベッコウバエ 国内分布:千島(国後島)、本州北部

Neuroctena formosa (Wiedemann, 1830) ベッコウバエ 国内分布:北海道、本州、四国、九州
Neuroctena baldia (Kurahashi, 1981) カミムラベッコウバエ 分布:本州中部
Neuroctena melanacme (Kurahashi, 1981)
 Neuroctena analis, Ozerov, 1999, nec. Fallen ハクサンベッコウバエ(=エゾベッコウバエ) 分布:北海道、本州中部
Neuroctena ecalcarata (Kurahashi, 1981) ワタナベベッコウバエ 分布:北海道、本州中部
Neuroctena amblia (Kurahashi, 1981) キイロベッコウバエ 分布:本州中部

Pseudoneuroctena senilis (Zetterstedt, 1838) 
 =Dryomyza bergi Steyskal, 1957 タテヤマベッコウバエ 国内分布:本州中部山岳

和名がほとんど地名や人名に基づいていて、多くはかなり形態的に特徴的なのに、形質に基づいた覚えやすい和名はないものでしょうか。

なお、Paradryomyzaの2種の検索表をOzerovからいい加減な訳を示しますと以下のようになるのかと思います。

Antenna entirely yellow. Katepisternum densely clothed with blackish pile. Spines on ventral side of hind femur fine, spinulate. Epandrium and surstylus as in fig.341,2. Length 5.4-6.6 mm. Amur, Zabaikal, Sayan. -- North America.・・・・・P. setosa Bigot
Antenna mostly black. Katepisternum sparsely clothed with yellow pile. Spines on ventral side of hind femur short and thick. Epandrium and surstylus as in fig. 341.3. Body length 4.6-7.9 mm. Amur, Southern Primorje, South Kuril (Kunashiri), Zabaikal, Komi, Kareria・・・・P. spinigera Ozerov

倉橋博士が示された写真の個体がはたして上記の2種のどれに相当するか。触角の色彩など少しわかりにくいと思います。


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